RIDGE KETTLE開発者たちの物語
狙った一滴まで、美しく。
何気ない"注ぐ"という動作を追求してたどり着いた、リッジケトル。
湯を注ぐ時間を、もっと心地よく。
キャンプでお湯を沸かす時間は、料理やコーヒーを楽しむための準備であると同時に、火を眺めながらゆっくり過ごす、大切なひとときでもあります。
だからこそ私たちは、「湯を注ぐ」という何気ない動作に目を向けました。
狙った場所へ思い通りに注げること。
最後の一滴まできれいに湯が切れること。
そして、使っていないときもサイトの景色になじむこと。
一見するとシンプルなケトルですが、その形の裏には約1年にわたる試作と検証があります。
すべては、「もっと気持ちよく注げるケトルをつくりたい」という想いから始まりました。
「あと少し」のストレスをなくしたかった
アウトドア用のケトルは数多くありますが、実際に使ってみると、小さな使いにくさを感じる場面が少なくありません。
例えば、ゆっくりコーヒーをドリップすると、お湯が本体をつたって垂れてしまう。
最後まで注ぎ切ろうとすると、大きく傾けなければならず、狙った場所へうまく注げない。
ほんのわずかなことですが、その積み重ねが使い心地を大きく左右します。
私たち自身も、さまざまなケトルを使う中で、同じような使いにくさを実感していました。
目指したのは、新しい機能を増やすことではなく、「湯を注ぐ」という、ごく当たり前の動作を、もっと自然で心地よいものにすること。
そして、焚き火のそばに置いても景色になじみ、長く使いたくなる道具であること。
そんな想いから、リッジケトルの開発はスタートしました。


必要なものだけを残した、機能美
開発で大切にしたのは、「足す」のではなく、「磨く」という考え方でした。
例えば容量。
ソロキャンプには十分な容量があり、ファミリーにはコンパクト。
その中間となるデュオキャンプにちょうどいいサイズを目指し、満水約1.2L、安全使用容量約0.8Lという容量にたどり着きました。
本体上部のプレスラインには、水量約1Lの目安という役割も持たせています。
また、本体には安定感を重視した平型形状を採用しました。
広い底面によって五徳の上でも安定しやすい一方、平型は少し間違えると重たい印象になってしまいます。
そこで面構成にエッジを持たせ、余計な装飾を削ぎ落とすことで、シャープなフォルムに仕上げました。
山の稜線を思わせる一本のプレスラインと、無駄を削ぎ落とした直線的なシルエット。
「Ridge(リッジ)」という名前も、このケトルを象徴するフォルムから生まれています。
装飾についても最後まで議論を重ねました。
ブランドロゴは見せたい。
しかし、道具としての美しさは損ないたくない。
その両立を目指し、ロゴは側面には入れず、蓋とハンドルの2か所だけに配置しました。
ハンドルを折りたたんだときにもロゴが見える設計にすることで、収納した姿にも美しさを残しています。

試作は7回。答えは、一度では見つからなかった
リッジケトルの開発期間は約1年。
その間、試作品は7回作り直し、金型も3回修正しました。
開発チームが最後までこだわり続けたのは、「注ぎ口」と「蓋」です。
一見するとシンプルな構造ですが、わずかな違いが使い心地を大きく左右しました。
最大の壁は「注ぎ口」
開発初期、最も苦労したのが注ぎ口でした。
最初の試作品では、ゆっくりお湯を注ぐと、注ぎ口の両脇からお湯があふれてしまうという問題が発生。
狙った場所へ丁寧に注ぎたいのに、それが思うようにできないという葛藤に向き合いました。
そこで開発チームは、注ぎ口にテープを貼って筒状の形を再現し、現場で何度も注水テストを実施。試行錯誤の末、注ぎ口は筒状へ変更しました。
さらに溶接に必要な距離を確保するため、本体のテーパー形状まで見直すという大きな設計変更も行いました。
しかし今度は、お湯が本体をつたってしまう"液漏れ"という新たな問題が発生します。
原因を探る中で気付いたのが、2ndサンプルだけはこの現象が起きていなかったことでした。
調べてみると、その理由は3Dプリンターによるわずかな造形誤差。
本来は意図していなかった形状の違いが、偶然にも湯切れを良くしていたのです。
その形状を量産設計へ反映し、さらに注ぎ口の角度など細かな調整を加え、現在の仕様が完成しました。



もう一つのこだわりは「蓋」
最後まで見直し続けたのが蓋でした。
検証を進める中で、液漏れの原因は、注ぎ口から蓋までの距離が短いことにあると判明し、
本体全体のデザインを見直し、蓋も一回り小さく設計し直しました。
さらに、本体と蓋のクリアランスも重要なポイントでした。
3Dプリンターでは精度に限界があり、わずかな浮きが生じるため、思うように検証が進まないこともあり、その度にやり直し。最終的には金型で実際に確認しながら、0.1mm単位で隙間を調整しました。
金型の修正は合計3回。そのうち2回は、注ぎ口のための修正です。
使う人には気付かれないようなわずかな差まで、最後まで追い込みました。


美しさも、最後まで妥協しない
試行錯誤は、機能だけでは終わりませんでした。
溶接跡の仕上がり。
研磨の方向。
表面の質感。
サンプルが仕上がるたびに、「この品質で届けられるか」を工場と何度も話し合いました。
場合によっては、溶接方法そのものを変更できないか相談したこともあります。
そうして選んだのが、ブラック耐熱塗装という仕上げでした。
落ち着いた質感だけでなく、使い込むほどに表情が変化していくことも、このケトルならではの魅力です。
試行錯誤の先に見えた答え



幾度もの試作と検証を経てたどり着いたリッジケトルは、「湯を沸かす」という何気ない時間を、美しく、心地よくするための一台になりました。
私たちが目指したのは、機能を増やすことではなく、本当に必要なものだけを磨き上げること。
エッジを効かせたフラットシルエットとマットブラックの質感は、焚き火の景色に自然と溶け込みながらも、静かな存在感を放ちます。
安定性を追求した広い底面、狙った場所へ思い通りに注げる細口ノズル、取り外す必要のない折りたたみ式ハンドル、置き場所に困らない蓋フック構造など、一つひとつの仕様には、開発の中で積み重ねてきた試行錯誤が息づいています。
毎回使う道具だからこそ、その小さな違いが使い心地を大きく変えます。
お湯を沸かす。
コーヒーを淹れる。
誰かと食事を囲む。
そんなキャンプの何気ない時間に、長く寄り添える道具でありたい。
リッジケトルには、そんな想いを込めています。
山の稜線を思わせるフォルムと、細部まで磨き上げた使い心地。
リッジケトルは、使うたびに「これがちょうどいい」と感じてもらえる道具を目指して完成しました。
開発者メッセージ
リッジケトルは、多機能さを追い求めた製品ではありません。
私たちが徹底してこだわったのは、「注ぐ」という、ごく当たり前の動作です。
思い通りに注げること。
最後の一滴まできれいに湯が切れること。
使い終えたあとも、美しく佇むこと。
その一つひとつを磨き続けた結果が、この形になりました。
キャンプの中の何気ない時間のそばで、長く付き合っていただける道具になれたら嬉しく思います。
STORIES